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演色性から見た照明用光源の歴史

2024年3月12日

屋外照明と演色性


第一回では全体照明、第二回では高い演色性が求められる特殊用途照明について書きましたが、今回は屋外照明について述べます。屋内ならばともかく屋外照明に演色性が大事なのかと思われるかもしれませんが、少し前まで、車でトンネルに入ると、前の車のボディの色や助手席に乗っている人の洋服の色が何色なのか全く分からなくなった経験があるかと思います。これは、最近までトンネルの照明に多く使われていたナトリウムランプの演色性が極端に低いことによるものです。屋外照明においても演色性は大事な要素であること、お分かりいただけるでしょうか?

LED照明の普及が進んだ現在においても、道路灯、街路灯、景観照明といった屋外照明に最も多く使われている光源は高圧ナトリウムランプ(以下HPSと表記:High Pressure Sodium Lamp)で、衛星写真で見た地球の夜景は、どの街も綺麗な橙色に輝いています。ただ空から見ると綺麗なHPSも、前述のトンネルの照明と同じで演色性が極端に低く、古い街並みやコンテナヤードなどでHPSの照明の下を歩くと洋服の色がほとんど分かりません。



水銀が含まれており、演色性が極端に低いにもかかわらず、現在も屋外照明にはHPSが最も多く使われている大きな理由の一つは、HPSには代替技術がなかったためRoHS指令における「ランプ中の水銀」に関する適用除外品となっていることですが、もう一つの大きな理由として、ガス灯や炎の色に近いHPSの落ち着いた色が人々から愛されていることが挙げられます。実際に、一度白色LEDに置き換えられた街路灯が、住民たちの反対運動によってHPSに戻されたという極端な事例もあります。昔から慣れ親しんだ色がリラックスできる、自分が住む場所の環境を変えたくないという人間の心理は、往々にして、効率、省エネ、脱水銀というような合理的思考に打ち勝って現実社会の在り方に影響を与えます。

当社では、このような状況を打開できるHPSの代替技術として、HPSと全く同じ発光色の低色温度LED、「ナトリウム灯色LED」を開発しました。LEDなので当然水銀は使われておりませんし、HPSよりも高効率でそのまま置き換えても省エネになる上に、フル点灯まで10分以上かかるHPSでは不可能な即時点消灯が可能なことで、必要な時だけ点灯し、不要な時には減光、あるいは消灯して更なる省エネを実現するスマートライティングを可能にします。加えて、HPSの5倍以上の長寿命でランプの交換頻度を大きく低減できます。人間の心理というバリアも取り除き、メリットばかりでデメリットが全く無く、脱水銀社会、カーボンニュートラルの実現にも大きく貢献できる「ナトリウム灯色LED」、ぜひお試しいただきたいと思います。

「屋外照明にも演色性が大事」と冒頭で述べておきながら、演色性についての説明をしていませんでした。
実は、当社は、このナトリウム灯色LEDの開発にあたっては、ひとつチャーミングな特性と魅力を盛り込みました。それがRa>70という一般のLED照明並みの演色性です。上述のように、HPSの演色性は極端に低く、街を、洋服の色も分からないようなモノトーンに染めてしまいます。ナトリウム灯色LEDは、発光色をHPSと全く同じにしながら演色性をRa>70まで高めることで、そこに住む人たちが絶対に変えたくない慣れ親しんだノスタルジックな景観を損ねることなく、モノトーンの街をフルカラーに変え、カラフルで心が浮き立つような快適な照明空間、防犯効果が高く安全な照明空間を実現します。

このように、当社では蛍光体とLEDの技術を組み合わせることによって、使用目的に沿ってそれぞれの用途に最適な光を創造し、光によって人々の生活をより豊かなものにすることを試みています。

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