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脱水銀社会実現に向けた当社の取り組み

2023年6月26日

プロジェクター用途における超高圧水銀ランプの代替技術


会議やセミナーなどで当たり前のように使われているプロジェクターですが、その光源としては今でも超高圧水銀ランプが主に使われています。超高圧水銀ランプは、その名前からも分かるように水銀が含有されており、環境汚染の懸念もあるためLD(半導体レーザー)やLEDなどの水銀フリーの固体光源への置き換えが期待されています。しかしながら、コスト他の理由から置き換えには時間がかかっており、RoHSにおいても少なくとも2027年までは「2,000 lm以上のプロジェクター用高圧水銀ランプ」は適用除外で製造・販売可能という扱いになっています。

LDやLEDは新しい技術です。歴史を振り返ってみれば、当社が世界で初めて高輝度青色LEDの量産を開始したのが1993年。その技術を応用して開発した青紫色LDの量産の開始が2001年。そして次に開発された青色LDを用いた世界初の固体光源プロジェクターが日本で発売されたのが、わずか10数年前の2010年です。新しい技術であるため、その技術的進歩はまさに日進月歩。RoHSにおいて2027年までの適用除外の判断の根拠となった調査がなされた数年前には、すぐに全面的に代替することは難しかったかもしれませんが、現在では、LD/LEDを光源としているプロジェクターは全製品出荷台数の35%(当社推定台数2021年データ)を占めており、この比率は年々急速に上昇しています。

以下では、プロジェクター市場/各セグメント(図1)のLD化率他、光源の現状をご説明いたします。

図1 プロジェクターの市場セグメント

シネマ

映画館などでは20,000 lm以上のプロジェクターが使われますが、効率が高く電気代の節約になること、寿命が長く光源の取り換え頻度が劇的に減らせること、また高い色再現性や高コントラストを実現可能なことから、既に出荷台数ベースでLD光源が90%以上を占めています。

ハイエンド

イベントホールやプロジェクションマッピングに使用される8,000-20,000 lmのプロジェクターにおいても、長寿命などの理由から、出荷台数ベースで90%以上がLD光源に切り替わっています。

メインストリーム

メインストリームに分類されるプロジェクターは、2,000-8,000 lmで会議室や教育現場で使用されるプロジェクターとなります。このカテゴリーでのLD光源の比率は未だに30%前後で、シネマやハイエンドに比べると低い水準に留まっていますが、以下にご説明いたしますような数々のLDならではのメリットと、市場拡大に伴うコスト低減が相まって、この比率は年々上昇しています(図2)。

LD光源のメリット

  • 長寿命によるメンテナンスや光源交換の頻度低減
    超高圧水銀ランプの寿命は3,000h~6,000hであるのに対し、LD光源では約20,000hが標準的な寿命となり、長時間のメンテナンスフリー運用が可能となります。光源交換頻度の低下は、コスト低減はもちろん、有害な水銀を含む廃棄物の削減と環境保全に繋がります。
  • 高い輝度と省エネ
    LD光源は非常に高い輝度を持つため、プロジェクターにおいてはより明るい映像を少ない電力で実現することが可能となり、省エネルギー性が向上します。
  • 即時点灯
    LD光源は即時に点灯し、すぐに最大の輝度に到達します。そのためプロジェクターを起動して素早く映像を表示することができます。超高圧水銀ランプで必要なウォームアップ時間が不要となるため、会議やイベントなどの場面で利便性が高くなります。

図2 2,000-8,000 lmプロジェクター台数の比率

小型/ポータブル

小型/ポータブルのセグメントは、固体光源における小型化の優位性の観点からLD/LED光源を前提に設計された市場です。超高圧水銀ランプは全く使われておらず光源の台数ではLEDが大半を占めています。

上記のように、大半のセグメントで、既に超高圧水銀ランプはLDやLEDに置き換えられ、あるいは置き換えられつつあり、当社といたしましては、プロジェクター分野での光源の脱水銀の大きな流れは既に出来ていると考えております。LDの、プロジェクター用超高圧水銀ランプの代替技術としての位置づけがしっかりと確立され、RoHS適用除外の2027年以降の延長が不要と判断頂けるよう、今後も、効率を中心とした製品の特性向上および、さらなる普及につながるご提案ができるよう取り組んでまいります。

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