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アカデミー科学技術賞を受賞

〜当社のレーザー技術が映画業界のプロジェクションシステムの発展に貢献〜

当社は、当社レーザーダイオード技術が映画業界の発展に貢献したことを評価され、映画芸術科学アカデミー(Academy of Motion Picture Arts and Sciences: AMPAS)よりアカデミー科学技術賞を受賞しました。

アカデミー科学技術賞について

アカデミー科学技術賞は、映画界に貢献した重要な技術を⽣み出した企業‧技術者に対して授与される賞です。

この度、映画館⽤レーザープロジェクションシステムに搭載される⻘⾊‧緑⾊レーザー光源の開発に携わった当社社員5名が、「技術成果賞(Technical Achievement Award)」というカテゴリで受賞しました。

近年、映画館に導⼊が進んでいるこれらの光源には、当社製⻘⾊‧緑⾊レーザーダイオードが広く採⽤されており、その普及に貢献したことが評価されました。

第96回アカデミー科学技術賞 授賞式

Group photo of the 96th Academy Scientific and Technical Awards Ceremony (Image©A.M.P.A.S.(R))

受賞者の紹介

左から 平尾剛(LDチップ開発) 森住知典(信頼性技術開発) 中津嘉隆(緑色LD開発) 髙鶴⼀真(パッケージ開発) ⻑尾陽⼆(⻘色LD開発)

賞状の写真

当社製LDモジュール
OctoLas™

アカデミー賞を受賞した背景

当社の受賞には、映画館でのプロジェクターの光源が、昔ながらの電球タイプのランプから当社のレーザーダイオード(レーザー光を使う新しいタイプ)光源に急速に置き換わっているという背景があります。ここではその理由をご説明致します。

⻑寿命

レーザーダイオードはランプ式光源に⽐べて寿命が⻑く、交換の頻度を⼤幅に減らすことができます。これにより、運⽤コストとメンテナンスの⼿間を削減できるだけでなく、廃棄物の量も減らし、環境への負担を軽減します。

⾼い画質

より広い⾊域を提供し、より鮮やかな⾊と深い黒を実現します。コントラスト⽐が⾼いため、映像がより鮮明でリアルになり、視覚的な体験が向上します。

明るさ

⾮常に明るい光を出すことができるので、⼤画⾯でもはっきりとした映像を映し出すことが可能です。これによって、映画館ではより⼤迫⼒の映画体験を提供できるようになります。

安定した光出⼒

⻑寿命のレーザー光源はランプ式光源より光出⼒の減衰が少なく安定しています。これにより、画質の劣化が少なく、⼀貫した映像品質を⻑期間維持できます。

省エネ

従来のランプ式光源よりもエネルギー効率が良く、消費電⼒を削減できます。これは、運⽤コストの削減だけでなく、エネルギーの使⽤量を減らし、⼆酸化炭素排出量の削減にも繋がり、環境への影響を低減する優れた選択です。

迅速な起動とシャットダウン

ランプ式光源よりも起動とシャットダウンが速く、プロジェクターの準備時間を短縮できます。

⾼い設置⾃由度

レーザープロジェクターは低消費電⼒により冷却機構を⼩さくできるため、従来のランプ式プロジェクターより本体がコンパクトです。またランプ式光源のような設置⽅向の制限が無いため配置がフレキシブルで、さまざまな⾓度や位置からの投影が可能です。これにより、映画館の空間設計においても柔軟性が増します。

技術の応⽤先

レーザープロジェクターの優れた性能は、映画館だけでなく、様々な場所での視覚的ニーズに応えるために広く利⽤されています。以下では採⽤が広がっている分野とその理由を説明致します。

教育機関

学校や⼤学などの教育機関では、教室や講堂でのプレゼンテーションや授業にプロジェクターを使⽤します。レーザープロジェクターの⻑寿命と低メンテナンスは、頻繁に使⽤される教育現場で特に重宝されます。また、⼤画⾯で明るく鮮明な映像は教材の視覚化を助け、学習効果を⾼めることが期待されます。

ビジネス

企業の会議室やイベントでは、プレゼンテーションや動画を⽤いたコミュニケーションが⼀般的です。レーザープロジェクターの明るい画像と鮮やかな⾊再現は、プロフェッショナルな印象を与え、ビジネスシーンでの情報伝達を効果的にします。さらに、瞬時点灯により無駄な待機時間を減らすことができ、時間の有効活⽤に貢献します。

エンターテインメント

コンサートやイベント、プロジェクションマッピングなどのエンターテインメント分野でも、レーザープロジェクターが採⽤されています。⾼い画質と⼤きなスクリーンへの投影能⼒は、観客に圧倒的な視覚体験を提供します。また、そのかけがえのない瞬間を守るための⾼い信頼性要望に応えることができます。

公共施設

博物館や美術館、図書館などの公共施設では、展⽰の解説や情報提供のためにプロジェクターが使われます。レーザープロジェクターは⻑時間の運⽤にも耐え、継続的な展⽰に適しています。

シミュレーター

⾶⾏機のパイロット訓練や⾞の運転シミュレーションなどでは、現実に近い体験を再現することが求められます。レーザープロジェクターは鮮明で豊かな⾊を実現し、設置⽅向に制限が無く様々な⽅向に映像を出せるため、没⼊感のあるリアルな空間を再現するのに適しています。また、⻑寿命でメンテナンスが少なく済むため、⻑時間の利⽤にもコスト効率が良いです。

ホームシアター

ホームシアター愛好家の間でも、レーザープロジェクターの⼈気が⾼まっています。家庭で映画館のような⾼画質な視聴体験を求めるユーザーにとって、レーザープロジェクターはその明るさと⾊の豊かさで、映画やスポーツ観戦、ビデオゲームなどをより臨場感溢れるものにしてくれます。

映画館の紹介

アカデミー科学技術賞を受賞した光源を搭載したプロジェクターを実際に使用している映画館をご紹介します。

Radiance of Beihai 様

シネマサンシャイン飯塚 様

(写真提供:Christie)

アカデミー受賞技術をあなたのもとへ

パッケージサイズの変遷

当社は、映画館品質の映像をご家庭でもお楽しみ頂けるよう、⼩型パッケージの開発、製品化に取り組んできました。
製品サイズを小さく、品質はそのままに、家庭⽤プロジェクターの限られたスペースにも搭載可能になりました。

映画館の技術を家庭に

JMGO様

Hisense様

8K 120” RGBレーザーTV 120LX

4K 100” RGBレーザーTV 100L8K

4K RGBレーザープロジェクター
Vidda C1 Pro

引用元:
https://visual.hisense.com/product/index.aspx?nodeid=2&dataNum=1
https://www.vidda.tv/#/product-detail?id=167

アンカー・ジャパン株式会社様

Dangbei様

XGIMI様

BenQ様

受賞者のコメント

中津嘉隆(緑色LD開発)

私たちのレーザー製品が用いられた数々の最終製品は世界的に評価をされておりますが、それらのコンポ―ネントまではあまり公開されてはおりません。直接的には表にでないGaN系半導体レーザー(LD)技術にまでご評価いただきました映画芸術科学アカデミーに感謝をいたします。授賞式のスピーチでも述べましたが、長尾さんは、青色LD素子設計。平尾さんは、リッジ構造や電極などのデバイス設計。森住さんは信頼性技術。そして新しいパッケージを開発された高鶴さん。これらの受賞者以外にも開発部署、技術部署や製造部署の方々のご協力により製品化が実現しました。また、GaN系LDの先駆者でもある長濱さん・小崎さんをはじめとするLD事業部の皆さまに感謝を申し上げます。そして、当社の緑色LDは、開発当初から映画館用シネマプロジェクターを主なターゲットとして開発されたものであり、シネマ関連のお客様には大変感謝しております。私は波長532nmといった緑色LDの開発に注力し、プロジェクトリーダーとしてシネマ向けの製品化を行いました。皆様のご協力なくしては、このような業績を達成することはできませんでした。

これから私たちと一緒に働きたいと考えていらっしゃる方々へ。日亜化学には、人類に役立つ新しい技術を開発し、イノベーションを起こそうという研究開発風土があります。"Ever Researching for a Brighter World"を理念に、カルシウム精製を祖業としてのスタートから、ガリウム金属や化合物半導体を経て、青色・白色LED、紫外~緑色LDといった光半導体へ事業を逐次転地し、光半導体産業の発展とともに会社も成長してきました。日亜化学は、新しいことに挑戦することを奨励してくれる会社です。今後も世の中に貢献する光源をチームとして新たに開発していきたいと思います。

高鶴一真(パッケージ開発)

今回この様な賞を受賞する事ができ、大変光栄に思っています。私はレーザーチップを搭載するパッケージ(OctoLas)の開発を行いました。当時、プロジェクターに使われるレーザーパッケージはTO-CANと呼ばれるチップが一つ搭載されたものが主流でありましたが、必要な光出力が大きい為、光源として使うには複数のCANを並べて使う必要があり、プロジェクターのサイズが大きくなり易く、コスト高な事が課題の一つでした。OctoLasは、一つのパッケージに複数のチップが集積実装され、放熱性を飛躍的に向上させた構造になっている事から、小型且つ高出力で低コストな光源を実現する事ができました。全く新しい構造を組立プロセスを含めて開発する事には様々な困難がありましたが、社内で多くの方の協力を得れた事や、それまでの間に色々な要素技術開発をやらせて貰えていた事が実現に繋がったと考えています。これからもレーザー光源を進化させる技術開発に取り組んでいきます。

平尾剛(LDチップ開発)

アカデミー科学技術賞を受賞することができ、本当に光栄です。この賞は、我々技術者の長年にわたる努力と研究への評価であり、その成果や価値が認められ、非常に嬉しく思っています。この素晴らしい賞を受け取ることで、日亜化学の技術力が世界に広まり、更なる成果を生み出すことが出来ると確信しています。
また、受賞にあたっては、我々以外の多くの仲間やサポートいただいた関係者の存在が欠かせません。技術開発や製品開発に携わっていただいた多くの関係者には、感謝の気持ちでいっぱいです。技術開発には数多くの試行錯誤や失敗があり、製品開発には様々なストレスやプレッシャーもありましたが、多くの関係者のご協力のおかげで、世界一の性能を持つレーザー光源が実現できています。
今回の受賞に満足することなく、今後もレーザー光源を進化させる技術開発に取り組み、今後の技術発展に貢献できるよう精進していきます。

森住知典(信頼性技術開発)

アカデミー科学技術賞の話を初めて聞いた時は大変驚きました。受賞が決まった時は大変光栄に思い、今後の大きな励みになりました。協力していただいた全ての方々のおかげであり、心から感謝しています。
映画用高出力青色LD、緑色LDに要求される製品寿命は数万時間になります。とても高い信頼性を求められますが、CODという突然光らなくなる問題が特に青色LDで発生しました。そのためCOD発生を抑制するためにLDチップの改良が必要でした。要求される信頼性を達成しているかどうかの検証は長い時間がかかるため、顧客に提示したロードマップ通りに高出力化していくことがとても大変でした。
映画館では青色LD、緑色LDを搭載したレーザープロジェクターにより、色鮮やかさが大幅に向上し、より没入感のある映画鑑賞体験ができるようになってきています。同様の高品質な体験が家庭でも気軽に楽しめるようになることを期待しています。

長尾陽二(青色LD開発)

この度、栄えあるアカデミー科学技術賞を受賞できたことは、技術者冥利に尽きる喜びです。
企画から技術、製造、営業に至るまで、LD事業部一同が懸命に努力を重ねた結果が今回の受賞に繋がりました。
当社には、自由に実験を行える環境・風土があり、研究開発の過程で自分たちのアイデアを存分に形にすることができた結果、世界一の発光効率をもつ青色・緑色レーザーダイオードが実現できました。
技術者の地道な働きが表に出る機会は少ないですが、この受賞が将来を夢見る子供たちや学生の皆さんが、技術の面白さに目を向け、技術者を志してくれることを心から願っています。
今回の受賞に満足することなく、私たちはこれからも革新的な技術を生み出し続け、人々の豊かな暮らしに貢献する製品を世に送り出していきたいです。
最後に育ててくれた両親、支えてくれた妻、二人の娘たちに感謝します。

社長からのメッセージ

代表取締役社長 小川裕義

数多くの課題をワンチームで乗り越え、開発に成功したことがこの度の栄えある賞に結びつき、大変光栄に存じます。
我々部材メーカーにもスポットライトをあて、ご評価くださった映画芸術科学アカデミー(Academy of Motion Picture Arts and Sciences: AMPAS)および映画界に携わるチャンスをくださったシアターシステムやプロジェクターメーカーの皆様に心より御礼申し上げます。
この受賞を励みとして、さらに光源技術を進化させ、映画品質を家庭でも体験できる新たなプロジェクター製品への貢献など、光半導体のパイオニアとして今後もより幅広く社会に役立つ技術や製品の開発に取り組んでまいります。

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