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脱水銀社会実現に向けた当社の取り組み

2024年10月22日

水殺菌用途における低圧水銀ランプ(殺菌灯)の代替技術


「脱水銀社会に向けた当社の取り組み」ブログはいったん中休みしておりましたが、水殺菌の分野において新たな進展がありましたので、ご紹介いたします。この度、水銀ランプをLED光源に置き換えた新しい水殺菌装置が、三浦工業株式会社様からリリースされました。そこで、今回のブログでは、この装置の特徴をふまえつつ、なぜLED化が実現可能だったのか、そしてLED化のメリットについて、改めて詳しくご説明いたします。

水銀ランプの一種に、殺菌灯とも呼ばれる低圧水銀ランプがあります。低圧水銀ランプは主に、殺菌の用途で使われています。例えば食品や製薬工場などでは、製品や製品に触れる装置の洗浄用水の殺菌用途として使われてきました。

低圧水銀ランプのエネルギー変換効率がおおよそ20%~30%なのに対して、一般的なUV-C LEDはおよそ5%程度とみなされており、発光効率だけで見ると光源のUV LED化は困難とされています。RoHS指令でも、水銀ランプ代替技術が無いとされ規制の適用から除外されていますが、エネルギー変換効率の数値だけでなく、これから述べるLEDの利点を考慮すると、LEDは現在の性能で、すでに代替技術となれる実力を備えていることが分かりました。実際に、UV LEDを搭載した水殺菌装置は既に量産が開始され、工場での導入が進んでいます。

【図1 水殺菌装置の照射イメージ(断面図)】

図1の通り、従来の水殺菌装置は、全方位に紫外線を照射する低圧水銀ランプの周りをパイプが囲む形になっているため、低圧水銀ランプから放射される紫外線がすぐに装置内壁に当たってしまい、折角の紫外線が無駄になっていました。

一方UV LEDは非常に小型ですので、装置の形状を問わず自由なレイアウトができます。そのため紫外線の利用効率を最大限に引き上げるような設計もし易くなり、低圧水銀ランプと同等の殺菌効果が得られるのです。

また、縦に長い低圧水銀ランプをUV LEDに代えることで、装置自体や、光源の交換に要するスペースを小さくできますので、装置1台を設置するために必要な空間容積が75%も削減されます。さらに、水銀ランプのように交換時に割れて、ガラスや水銀が拡散することもありませんので、設置場所に悩むことなく、安全で自由な使い方が可能となります。(図2)

【図2メンテナンス作業はより簡単に、必要空間容積はより小さく】

さらに、低圧水銀ランプは一度消灯すると再点灯するまでに時間がかかるため、常に点灯させておく必要がありますが、LEDは即時にOn/Offするので、使わない時だけ、一時的に点灯をoffにしておくことができます。

また、LEDは出力調整も可能なので、流量が少ない時は出力を弱めることで、必要最小限の紫外線量で照射を済ませることができます。表1のように、水銀ランプの水殺菌装置とUV LEDの水殺菌装置を同じ条件で比較した場合、UV LEDの装置の方が消費電力量は少なくなりますが、On/Off機能や出力調整機能によって、さらなる消費電力量の削減が可能です。その結果、CO2の排出量の削減にもつながります。

【表1 低圧水銀ランプとUV LEDの装置比較結果】

  水銀ランプ UV LED
光源の発光効率 20%~30% 5.4%
装置サイズ W320mm×D405mm×H1,340mm W158mm×D223mm×H522mm
On/Off 不可
消費電力 220W
(処理水量6 m3/h 品)
157W
(処理水量8 m3/h 品)
殺菌能力
(枯草菌芽胞)
99.9%以上 99.9%以上

三浦工業株式会社様の水殺菌装置との比較

まとめ

今回の事例では、単なるエネルギー変換効率では水銀ランプに劣っているようにみなされても、水殺菌の分野では実際にLEDの特長を活かして紫外線を最大限利用することで、LEDが水銀ランプの代替となることが明確になりました。また、装置の設置に必要な空間容積の削減や、瞬時のOn/Offでの点灯時間の短縮など、UV LED化による多くのメリットを享受することができるのです。

当社は今後もUV LEDのさらなる技術開発を続けることで、今回ご紹介しました水殺菌以外に、UV LEDがあらゆる殺菌分野においても低圧水銀ランプの代替技術となり、またRoHS指令の適用除外の2027年以降の延長が不要と判断されることで、さらに脱水銀、環境負荷低減に貢献したいと願っています。

当社は引き続き、水銀フリー社会や脱炭素社会の実現などの社会問題の解決に取り組んでまいります。