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演色性から見た照明用光源の歴史

2024年1月10日

全体照明の歴史と演色性


照明業界では、通常、光源の特性、優劣を光束や発光効率で語ろうとしますが、同時に演色性、色度、分光分布も重要な光の因子です。その中でも演色性は、照明に照らされたものの見え方がどれだけ自然光の下でのものに近いかを規定する非常に重要な因子です。本ブログでは、この演色性から見た照明用光源の歴史をテーマとさせて頂きますが、まず第一回では、我々の日常生活に欠かせない全体照明について述べたいと思います。

屋内照明における全体照明の歴史は、1938年にアメリカのGeneral Electric社が発表した蛍光灯から始まりました。それ以前の屋内照明用光源は白熱電球が主流で、どちらかというと必要なところだけを照らす、いわゆる部分照明に近い照明でした。

部屋全体を明るく照らす蛍光灯は、1940年前後から販売が始まり、1950年代に一気に普及しました。当時の蛍光灯(ハロ蛍光灯)にはハロリン酸カルシウムという蛍光体が使われていました。この蛍光体は、水色と橙色を組み合わせることによって白色を作るタイプで、水色と橙色の比率を変えることで、3000Kから6500Kまで自由に色温度を変えることができました。しかし、自然光を基準としてどれだけ色を忠実に再現できるかという演色性を判断する指標となる平均演色評価数(Ra)は、3000Kから4000Kで60台、6500Kでも70台と、自然光と同等のRa100を実現する白熱電球に比べると非常に低い数値でした。また赤色成分が著しく不足した光であったため、特殊演色評価数の特に肌の色の見え方を表すR13やR15も40~50台と非常に低い値で、この蛍光灯下での顔色の悪さは不評でした。

1970年代後半になると、オランダのPhilips社が開発した希土類蛍光体を用いた三波長蛍光灯が販売され始めました。三波長蛍光灯とは、光の三原色である赤色、緑色、青色の三色の蛍光体を組み合わせて白色を作るタイプで、この三波長蛍光体の導入で効率は従来のハロ蛍光灯の約1.5倍の100lm/Wに、同時に平均演色評価数Raも80~88まで改善されました。赤色成分が加わったことで、肌の色の見え方を表すR13/R15は90以上と、太陽光下で見るのに比べてもほぼ遜色のない見え方になり、その後約30年間は、三波長蛍光灯が全体照明の主流として君臨しました。

ところが2000年代に入り、白色LEDの効率が三波長蛍光灯の効率を凌いでくると、屋内照明は次第に蛍光灯からLEDに置き換わりはじめました。しかし当時、効率を高めることに集中しすぎたため、三波長蛍光灯に要求されていた平均演色評価数Ra≥80だけは踏襲されましたが、特殊演色評価数の方はおざなりにされ、三波長蛍光灯で100近い値を出していたR13/R15は、70~80台まで下がってしまいました。これが、蛍光灯をLEDに取り替えると、なにか顔色が悪くなった気がするという不満の声が聞かれた理由です。

当社は、現在の屋内照明の標準仕様となっているRa80台のLEDは、三波長蛍光灯の真の後継品とは言えないと考え、また「光の質」というものは常に進化すべきであり後退させるべきではないという考えに基づいて、2020年にH6シリーズという高効率と高演色を両立したLEDを開発し、世に送り出しました。Ra80台のLEDと同等の効率を維持しながら、Raは三波長蛍光灯をさらに上回る90台、R9も三波長蛍光灯を上回る50~80台を 、R13/R15は三波長蛍光灯と同レベルの90台の、高質な光を実現しています。当社は、人々の生活を明るく彩り、心躍るものにするため、H6シリーズのLEDが屋内照明の標準仕様となることを目指しています。

ハロ蛍光灯 三波長蛍光灯 LED(従来品) LED(H6)
効率(lm/W) 60~70 90~105 180~200 180~200
Ra 60~74 80~90 80~85 90~95
R9(赤色) -100~-40 20~40 0~10 50~80
R13(肌の色) 50~60 90~96 80~85 92~98
R15(肌の色) 40~50 93~98 75~80 92~98

屋内照明の演色性の移り変わりを実際に体感していただくためのデモキット

H6シリーズの詳しい情報はこちら